変化する香り その2

オイルが変化する場合もある

パチュリ、ペチバーは私のお気に入りのオイルです。私のような、明らかな昭和世代にとって、パチュリ、ペチバーは、実にノスタルジックなオイルであります。
オリエンタルとも言えますね。
しかし、昭和の記憶とこれらの記憶が結びついているわけではない。「少年時代に嗅いだ記憶がある」と言うだけで、具体的事象と結びついているわけではない。
しかし、初めてこれらを鼻に近づけた時に覚えた感覚は、古い記憶の根底に横たわっている動かし難い記憶を呼び起こし、決して戻ることの出来ない苦くもあり甘くもある幼い昔に、一瞬ではあるがタイムスリップする感情を起こさせる。

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かつての欧米による植民地政策でアジアが苦しんでいた時代(だが、決して過去のことでもないのだが・・・)、ヨーロッパに持ち込まれた品々に、防虫剤として使われていたのだそうだが、そうした事実も私自身の記憶に何かしら絡んでいるのかもしれない。

お恥ずかしい話だが、私はこの二つの区別が実は付けられない。
当初は、香りを並べて嗅ぎ比べても、何が違うのか判別がつかなかったくらいだ。
今は、その違いがわかるようにはなったが、それもごく最近のことだ。ラベルを隠されて「さあ、どっちだ」と嗅ぎ分けテストをされたら、間違いなく答えられないだろう。
私にとって、パチュリ、ペチバーはそれほど「似た」香りといえる。ただ、他の方の評価は聞いたことがないし、アロマ入門書等では当然の如く別物として扱われているので、「バカ鼻」は私だけかもしれない。

さて、この「バカ鼻」をもって、それでも二言三言、このオイルのたのしみをお話ししたい。

エッセンシャルオイル全般の保存期間のことであるが、当然一様ではない。
私の実感としては、比較的長持ちするようである。1年~2年は持つようだし、一部のオイルを例外として、香りが劣化したという事実にはあまり遭遇したことはない。
しかし、オレンジ等の柑橘系は注意が必要である。一年以上保管していると香りの劣化は確実に起こる。酸化するのだそうだ。
オレンジ、レモン等の柑橘系、パインニードル、サイプレス等の針葉樹系は、モノテルペン炭化水素類(主にリモネン等)を多く含みこれが酸化しやすく、肌に刺激を与えるのだそうだ・・・(と、本には書いていた)。だが、1年以上保管したこれらのオイルでトラブルに出会ったことはありません。
注意して扱うことに違いはありませんが、一般論を鵜呑みにすべきではないと私は思います。

このように、長持ちしないオイルがある一方で、長く保管するほど「良くなる」オイルもあるわけです。

それがこの、パチュリ、ペチバーであります。
写真に並んでいるのは、左から、3年前に購入した中国産パチュリ、同じくジャワ産のペチバー、購入して一年経っていない(そろそろ一年)インドネシア産パチュリ、同じくインドネシア産ペチバー、ハイチ産ペチバーです。

最近気づいたのですが、そろそろ一年のこのオイルを嗅いでいて、それぞれの違いと古いオイルとの違いを考えつつ、「ずいぶんと違いがあるものだ」と考えていたとき一つの事実に気づきました。3年物のこの二つがずいぶんと香りがよくなっていることに、このバカ鼻は気づいたのであります。

いずれも土の香りと形容されるのですが、そこには泥臭い甘さと、香ばしい香りが混ざり合った濃厚な香りがあるのですが、その濃厚さがはるかに強くなっていることに気づいたのです。
それぞれの香ばしさ、甘さに違いがあり、しかも微妙ではない明確な違いがあるのですが、新旧の違いとしてみると、その濃厚さそのものの違いがはっきりと判別できるのです。
ものの本には「ローズに近い香りになる」と書いてありましたが、残念ながらローズにはなりません。全然違います。やはりパチュリは古くなってもパチュリで、ペチバーもまた然りです。しかし「その気持ちわかる!」と一部賛同しちゃいます。

このオイルはとても私のお気に入りで、頻繁に香りを嗅いでいるのですが、どうしても古い方に手が伸びてしまいます。
しかし、「身に着ける」にはちょっ向かない香でもあります。
女性の場合はわかりませんが、男性として身に着けるには香りが強すぎます。また、長く香りを漂わせるより、一瞬確認するだけで、その目的を達せられる香りでもあると私は感じています。
つまり、この自己主張の強いオイルは、思いついたときにビンの蓋を取りクンクンと鼻に近づけるだけで、十分満足できる、精神的安定を取り戻せる、そんなストロングなエッセンシャルオイルなのだとおもいます。

結果、キャリアオイルに混ぜ込んで、肌に塗るという用途には使わないので、3年物の二つの瓶は、今でもそんなに減ることなく、私を楽しませてくれるわけです。

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